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函   表紙

『建築家・坂本一成の世界』

[著作]坂本一成・長島明夫
[編集]長島明夫
[ブックデザイン]服部一成・佐藤豊
[写真]qp [英訳]牧尾晴喜

A4変型判/304ページ/上製・函入り/カラー&モノクロ/主要部分日英併記/2016年9月5日発行/5200円+税/LIXIL出版
※LIXIL出版の廃業により、2022年秋で販売終了(絶版)の予定
……書影出版社HP概要PDF

●趣旨
 坂本一成の50年におよぶ建築の仕事を網羅した決定版作品集。図面や写真の充実は当然のこと、この本の特徴は、大判の美しい建築写真を載せるだけで事足れりとせず、各作品における具体的な部分を徹底して言葉で説明しようとする点にあります。同時にその言葉は現実の建築がもつ豊かさを一義的に限定するものではありません。坂本の思考をなぞりながら書き下ろされた細密な解説(約38,000字)に加えて、様々な時代における坂本自身の言葉や他者の言葉を断片として散りばめ(約28,000字)、個々の図版と響きあわせながら、意味の広がりをもたらしています。
 このような本の在り方は、坂本の建築の在り方に呼応しています。坂本の建築はたった1枚の整然たる写真で表せるものではありません。その写真に写っているだけでないあらゆる部分が、ほかの部分あるいは全体、さらには敷地を超えた世界と響きあうなかで成り立っています。一つの固定化した秩序が全体を規定するのではなく、様々に異なる要素が多様な関係を持ちながら併存する、それこそが坂本一成の建築的世界だと言えるでしょう。そしてその世界を2次元の書籍の形式で再現するために、数多くの写真や図面とともに、それらを意味の地平に開く言葉が必要とされました。
 坂本は住宅を中心とする作品で建築界に確固たる位置を築き、また設計の基盤となった大学の研究室からは、多くの後進を輩出してきました。一方で、その作品の多くは住宅であるため、実際に見学する機会は極めて限定されています。本書はそうした坂本の建築の世界を、丹念な編集によって、より広く一般に開くことを意図しています。

●構成 ……目次画像
⓪ 編集言
① 作品|218ページ(カラー&モノクロ)
坂本がこれまでに手がけた全32作品を掲載(計画途中の作品を含む)。豊富な図面(約300点)と初公開を多く含む写真(約220点)、新たに書かれた解説(英文併記)に加え、各時代において坂本自らが建築を語った言葉や、他者(計16名)による批評・考察から、そのエッセンスを抜粋して掲載。(解説執筆=長島明夫)
② 坂本一成との対話|約2000字×6編(英文併記)
下記の6つに分類したキーワードに基づき、坂本建築の成り立ちを建築家自身が語り下ろす。「日常・文化・建築」「関係・構成・相対化」「人物・影響・協同」「言葉・批評・メディア」「寸法・スケール・プロポーション」「プロセス・スタディ・ツール」。
③ 撮り下ろし写真|32ページ(カラー)
実作のうちの2作《House SA》と《宇土市立網津小学校》の現在の生きられた姿を掲載。多感なアーティストが「建築と物」「建築と人」の日常を活写。(写真=qp)
④ 全作品歴|31ページ(モノクロ)
1966年の大学卒業設計以降、計画案を含む全作品を網羅的に紹介(121作)。すべての作品に図版と短文を付し、寡作の住宅作家として知られる建築家の別の側面を照射する。
⑤ 資料編|13ページ
「書籍」「文章・記事・作品掲載」「学術論文」「展覧会」を完全リスト化。他者による批評や解説も含む。

●著作者略歴 ……プロフィール写真(撮影=qp)
坂本一成(さかもと・かずなり)
1943年、東京生まれ。1966年、東京工業大学理工学部建築学科卒業、同大学院理工学研究科建築学専攻入学(篠原一男研究室、~1971年)。1971年、アトリエ・ハウス10設立・主宰(~1983年)、武蔵野美術大学建築学科専任講師(1977年~同助教授)。1983年、東京工業大学建築学科助教授(1991年~同教授)、工学博士の学位を取得。1991年、アトリエ・アンド・アイ設立・主宰(~現在)。2009年、東京工業大学を定年退職、名誉教授となる。1990年に《House F》で日本建築学会賞(作品)、1992年に《コモンシティ星田》で村野藤吾賞、2013年に『建築に内在する言葉』で日本建築学会著作賞をそれぞれ受賞。
http://a-a-i.co.jp/

長島明夫(ながしま・あきお)
1979年、神奈川生まれ。2001年、明治大学理工学部建築学科卒業。2003年、東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了、出版社エクスナレッジ勤務(~2008年)。2009年、個人雑誌『建築と日常』創刊、以降同誌にて坂本に3度のロングインタヴューをするほか、坂本の論説集『建築に内在する言葉』(TOTO出版、2011年)の編集を担当。その他の編書に『ザ・藤森照信』(エクスナレッジ、2006年)、『映画空間400選』(結城秀勇共編、INAX出版、2011年)など。
https://kentikutonitijou.web.fc2.com/

●刊行記念座談
坂本一成×服部一成×qp×長島明夫「建築のデザインと本のデザイン──『建築家・坂本一成の世界』制作チームによる座談」10+1 website
http://10plus1.jp/monthly/2016/11/pickup-01.php
※構成:まな板の鯉と料理人たち/本の外観についての見解/一成ミーツ一成/建築と建築写真/スライドショー/写真と現実のずれ/レイアウトの成り立ち/写真・言葉・図面の相補性/座談後記(合計約18,000字)

●刊行記念パーティー動画
9スピーチ+1コメント(伊東豊雄・藤岡洋保・塚本由晴・石堂威・富永讓・難波和彦・能作文徳・八束はじめ・山名善之・長谷川豪)

※リンク先のYouTubeのサイトでは、画面下の「もっと見る」をクリックし、それぞれの方のお名前の横の数字(発言開始時間)をクリックすると、各スピーチが頭出しできるようになっています。
https://youtu.be/xIThuMT-5_Q

●編著者・長島明夫による覚え書(『建築と日常』編集者日記より)
作品集のタイトル
建築取材の経験
作品集の日常性
作品ページの構成形式とレトリック 1
作品ページの構成形式とレトリック 2
解説文の書き方

●書評
塩崎太伸「関係が宙吊りなことをひとつの主題とした物語り行為としての建築と書籍」『SD2016』鹿島出版会、2016年12月

●関連ツイート(随時更新)
http://togetter.com/li/1022954

●個人雑誌『建築と日常』での長島明夫による坂本一成へのインタヴュー
全ページ公開:「建築にしかできないこと」(約17,000字+脚註9,000字)『建築と日常』No.0、2009年
冒頭部&一部音源公開:「坂本一成による多木浩二 創作と批評の共振」(約100,000字)『多木浩二と建築』(別冊)、2013年
冒頭部公開:「建築をめぐるいくつかの時間」(約50,000字)『建築と日常』No.3-4、2015年
冒頭部公開:「河井邸の尽きせぬ魅力」(約8,000字)『建築と日常』No.5、2018年


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